相互誘導イメージ療法

ヒプノセラピーは、「退行催眠や前世療法でしょ?」と思われることが多いのですけれど、
日頃、対面カウンセリングや電話カウンセリングでも効果的なものに誘導イメージ療法があります。

誘導イメージ療法は、ヒプノセラピーを応用したイメージ療法でありながら、胸のモヤモヤ感や様々な痛みや痺れ、手足やお腹の冷えなど、体の症状や病気との対話はもとより、心の中にずっと抱えてきた違和感や痛みを癒してゆく面でも、非常に効果的なセラピーです。

誘導イメージ療法がどんなセラピーなのか? 一例として書籍『癒す心・治る力』アンドルー・ワイル著 95年 角川書店刊 の一部を抜粋・掲載いたします。

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『癒す心・治る力』 P138 抜粋

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心身相関に関する長年にわたるわたしの信念を一層強化し、それを契機に、身体症状を訴えてくる患者の精神生活や感情生活により一層細かい注意を払うようになった、あるささやかな経験を紹介しよう。

1991年8月、妻のサビーネが4番目(私にとっては最初)の子供を身ごもって7ヶ月目のことだった。

私達はカナダのブリティッシュ・コロンビアに来ていた。

私がそこで「健康と治療にかんするワークショップ」を行っていたからだ。

ワークショップの参加者の一人に、私の友人で同業者のマリリン・リームがいた。

マリリンはワシントン州スポケーンの家庭医で、女性のためのヘルスクリニックの勤務医でもあった。

彼女はまた、わたしがよく使う心身相関療法のひとつである「相互誘導イメージ療法」の訓練を受けたセラピストでもあった。

わたしはワークショップで彼女にその療法のデモンストレーションをしてくれるようにたのんだ。

すると、マリリンはサビーネに、よかったら被験者になってほしいといった。


サビーネは同意した。妻には妊娠のたびに腰痛が起きるという病歴があった。

たいがいは妊娠7か月のころに、ふたつの腰椎にずれが起こり、


アリゾナでは週に1回、カイロプラクティックの矯正を受けていた時期だった。


数週間のあいだカイロプラククーがそばにいなかったので、彼女はしつこい痛みに悩まされていた。

マリリンは妻に、誘導イメージ法で腰痛に働きかけたいか? とたずねた。



妻は「ノー」と答えた。自分の腰痛は機械的な解決法で治る機械的な問題だと考えていたからだ。



そのかわり、妻は出産の問題にたいしてワークすることを望んだ。

出産予定日の一週間後にわたしが外国に旅立つ予定なので、妻はちょうど予定日に産むことを望んでいた。



また、安産も願っていた。前回の出産が長時間にわたり、難産だったからだ。



マリリンはサビーネに、衣服をゆるめて床に横になり、深呼吸をつづけるように指示した。

相互誘導イメージ療法は、軽いトランス状態を誘発させ、無意識のこころに近づけるために



ヒプノ(催眠)療法の形式を用いるが、病気に対処するための独自の戦略を患者自身に思いつかせることによって、



標準的なヒプノ療法より高い自己制御能力を患者にもたせることができる。

「無意識のこころは、病気のプロセスの本質とその治しかたを知っている」という仮説にもとづくその方法は、



【治癒系に診断能力がある】とする仮説と一致するものである。



むずかしいのは、日常的な意識にその情報を受けとらせ、患者にその情報にしたがった行動をさせるところにある。



(*この点は、他のヒプノセラピーでも一緒で、見たビジョンやイメージ、受け取ったメッセージなどを、普段の思考や生活など、日常の意識にどう活かすか? という事を言っていると思われ、私のセラピーでも、セッションが終ったかのようにしておきながら、雑談をしていると、『あ! さっきの事ってこうゆう事ですよね!』と繋がって、気づいたりする事が多いが、この一見雑談のような対話が、実はとても重要であったりする。)

マリリンはサビーネに



「どこか知っている場所で、なににも邪魔されない、こころから安心できる場所をイメージするように」



と指示してワークをはじめ、サ ビーネにその場所を描写させた。

サビーネはユタ州南部の、大峡谷の一角にある風景について話しはじめた。



マリリンはその風景の細部に意識を集中して、



【見るだけではなく、音を聞き、匂いをかぐよう】に指示した。



サピーネは意識を集中し、たちまちリラックスしはじめた。



(*プロセスワークでも、イメージの中での五感を重視する)

次にマリリンは、意識を子宮とそこにいる赤ん坊に集中するように指示した。



サビーネは、すぐに赤ん坊とコンタクトをはじめた。



マリリンは、妻が赤ん坊と対話するように誘導し、



妻は彼女(そのときには女児であることがわかっていた)に予定通り出てくるように頼み、



彼女(お腹の子)は同意した。

ついでに出産が楽にできるように協力してくれとたのんだ。



その対話のなかでサビーネは、自分の質問に対して、



赤ん坊が答えたように「聞こえた」通りのことばで話していた。

しばらくして、サビーネはワークが終わったと感じ、



マリリンは彼女にユタ州南部の場所にもどるように指示した。

「いまの気分は?」マリリンがたずねた。



「最高よ。とてもおだやかな感じ」



「他にワークしてみたいことはない? 腰はどう?」



「そうね、やってみようかしら」



「わかったわ。じゃあ注意を腰の痛いところに向けて、どんな感じか言ってみて」



サビーネは小さくあえいだ。



「どうしたの?」マリリンがたずねた。



「そこは・・・ 真っ暗」



「その暗いところに入って行って。 それがあなたになにか言っていないか、調べてみて。」



マリリンがそう指示した。

「すごく怒っているって!」



びっくりしたような口調で、サビーネが答えた。



「わたしのことを怒っているんですって!」



サビーネにとって、【腰が】そんなに激しく怒っているなど、思いもよらないことだった。



サビーネはマリリンの誘導でおずおずと腰との対話にはいり、



サビーネの方(意識)が腰に怒っているから、【怒り返している】こと、



『気にかけてくれないから怒っている』ことに気がついた。

「どうしてほしいのか、聞いてみて」マリリンが指示した。



「温かいタオルを当ててほしいって」



「そうしてあげる?」



「いいわ。でも、わたしはずっと腰を冷やしてきたのよ。冷たいほうが良いと思って」



「温かいタオルをあてるといってあげて。

そしてイメ一ジの中でタオルをあてて、痛みを止めてくれるかどうか聞いてみて。」



「タオルをあてたわ。痛みは止めるって!」



「腰はどんな感じ?」マリリンがたずねた。



「いいみたい」サビーネはそう答えて、床のうえを動きはじめた。



「ずっといいわ。何週間ぶりでいいみたい」

「完全に消えたの?」



「いいえ」



「痛みに聞いてみて、完全に消えられるかどうかって。」



「消えられるって」



「お顔いだから消えてと、たのんで。」



「オーケー、たのんだわ。消えたみたい」

「じゃ、今はどう?」



「驚いたわ、消えたみたいよ」



「完全に?」



サビーネはからだをあちこちに動かした。



「そう。ほんとに消えたわ!」

サビーネが日常的意識にもどっても、痛みは消えたままだった。



その夜にも翌日にも再発しなかった。



(それでもサビーネは腰に温かいタオルをあてるという約束は守った)

実際、二度とカイロプラクティック治療は受けなかったにもかかわらず、



妊娠期間の最後まで痛みはもどらなかった。



サビーネにとって、妊娠の最後の2か月を腰痛無しですごしたのは初めてのことだった。

電話による遠隔治療

出産のときの模様については後述するが、ブリティッシュ・コロンビアからアリゾナにもどって、



わたし自身も相互誘導イメージ法でおもしろい経験をしたので、それを紹介しておこう。

サビーネとわたしは車でトゥーソンに向かう途中で、ワシソトソ州オリンピアに立ち寄り、



ホットタブ(木製の大型浴槽)に凝っている友人をたずねた。



ホットタブについては、わたしもかなりうるさいほうで、



ふだんは気にいらないタブには入らないことにしている。

その友人のタブには一瞬疑問を持ったが、何となく入ってしまった。



2日後、皮膚の感染症が発症した。



毛包の細菌感染である「ホットタブ毛包炎」は、今では公認の疾患であり、



根治がむずかしいことで名高いシェードモナス菌が起こすものである。

わたしの場合、左の下腿と膝に痛みを伴ういくつかの皮疹が生じた。



旅行中のことで適切な処置はとれなかったが、朝と晩に感染患部への温庵法を施し、



過酸化水素をつけることはつづけた。

患部には膿汁がふくまれているようにみえたが、温庵法で押し出そうとしてもなにも排出されなかった。



やがて、感染は大腿部と左腕にもひろがって行った。感染が上半身にひろがるにつれて、わたしは本気で心配しはじめた。

感染から1週間後、自宅に戻ったときには顔にまでひろがり、全身の倦怠感がはじまった。



あしたは専門医に診てもらおうかと考えているとき、



腰痛が治ったときの高揚した気分をひきずっていたサビーネが、

「マリリンに連絡して、電話で誘導イメージ法をやってもらえば?」といった。



「よせよ」わたしはいった。



「これは細菌感染だぜ」



サビーネはしたり顔でふり返り、



「あの腰痛も確か機械的な障害だったわよね?」と皮肉をいった。

自分のためというより、むしろサビーネのために、マリリンに電話をした。



マリリンは、電話でのワークはしたことがないが、やってみると答えた。



わたしは電話機を抱いて長椅子の上に縮こまり、右耳に聞こえるマリリンの誘導の声にあやされながら、



ニ一ューメキシコ州のウィルダネスにある、お気にいりの場所をイメージした。

その場所に落ちつくと、マリリンは、わたしにいちばん気になっている部位の皮疹を選ぶようにいった。



顔の皮疹を選んだ。



「そこに意識を集中させて」マリリンの指示がきた。



「そして、なにが見えるか、言ってみて」



窮屈なところに閉じこめられて怒り、巨大な渦を巻いている真っ赤なエネルギーがみえた。



「それがなにか言っていないか、聞いてみて!」



わたしはその皮疹に注意をかたむけ、声を「聞い」た。



こころのなかに、すぐにことばが飛びこんできた。

「からだから外に出ていけない、と言ってる!」 わたしは興奮しながら報告した。



「外に排出させようさせようとしてきたんだが、できないんだ。



「からだから消える唯一の方法ほ、内側にはいって吸収されることだ。」

「もしそうなら、あなたはどうするの?」 マリリンがたずねた。



わたしの日常的意識が答えを用意した。



「そうだな。押しだそうとするのをやめることかな。温庵法はいいんだが、心身を休めることのほうが大事だな」

「他になにか言っていない?」



「わからない。ただ、血液循環をよくするためにトウガラシを食べた方がいいと思いついた」

「じゃ、最初にイメージをはじめた場所にもどって」



電話を切ると、サビーネが「皮疹の色が変わった」といった。「紫色がなくなったわ」

わたしにはなんの変化もみえなかったが、ともかくリラックスした気分で寝室に行き、



自分のからだが解決してくれると確信した。

翌朝、まだトウガラシも食べず、なにもしていないにもかかわらず、



皮疹があきらかに消退をほじめているのがわかった。



そして24時間後、うれしいことに全身の感染箇所が快方に向かっていることがはっきりした。

相互誘導イメージ療法のような、純粋に心身相関的な治療法によって脊椎のずれによる腰痛や皮膚の細菌感染が治ったのなら、



その方法をいろんなことに応用できないはずはないではないか?



こうした経験はわたしに、『心の介入の届く範囲をこえた身体症状はない。』という確信を抱かせるにいたった。

とくに、心身相関を活用した技法は、他の方法にくらペて時間的にも費用的にも効率がよく、



副作用を及ぼしにくいので、これを使わない手はないと思うのである。

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出産予定日の3通間前、わたしは医者仲間の友人で、ヒプノ療法家でもあるスティーブ・ガージピッチ博士を招いて、



出産が予定どおりに、すばやく、楽に行なえるようにサピーネに催眠をほどこしてもらった。



胎児には胎位異常がみられ、それが気がかりだった。

前回の分娩でも同じ後方胎位がみられ、陣痛が長く、難産だったからだ。



ステイーブは午後遅くに、一時間ほどサビーネに催眠をかけて、赤ん坊と対話をさせ、



出産が始まる前には胎位を変えて、楽な出産の手助けをするように赤ん坊に頼ませた。

スティーブによって白昼夢から現実につれ戻されたサビーネは、リラックスしきっているように見えた。



スティーブが帰ると、サビーネとわたしはキッチンに行って夕食の準備にかかった。

すると突然、サビーネが腹部をおさえて、身をかがめた。



「どうした?」わたしはたずねた。



「赤ちゃんが回転してるんだわ!」



驚いたような顔をしながらサピーネが答えた。

その日の夕食には、たまたま助産婦がくることになっていた。



助産婦はサビーネを診察して、正常な前方胎位にもどっているといった。



そうするように頼んでから、わずか20分後のことだった。

赤ん坊は律義にも予定日に合わせて、10月4日に生まれた。



陣痛は2時間6分で終わり、とりあげる父親の準備が間に合わないほどだった。

いうまでもなく、以来、サビーネとわたしは心身相関療法の真の信奉者になり、



医師や研究者たちが健康と治癒における、心の役割を不当に無視した事態を耳にするたびに、天を仰ぎつつ、互いに笑みを交わしている。』

『癒す心・治る力』 抜粋 ここまで。

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いかがお感じになられたでしょう?

私達の心と体は、一つのものです。

ふとした身体の不調が、普段の何気ない考え方や、ちょっとした行動や習慣によって引き起こされていたり、

心や体に表れる違和感や症状(病気)が、実はあなたの心と体の健康や、人生の大切な事を教えてくれているメッセージであったり、

身体(身体の知性) や潜在意識が、気付かない内に、ただ黙々とやってくれている自己治癒力の現れであったり、あなたの意識(顕在意識)に気付いてほしくって《症状》という表れ方で《訴えていること》もあるのです。

誘導イメージ療法は、ヒプノセラピーの一種とも言えますが、実際には、ごく普通の対話の中で、『ちょっと心の内側のイメージに意識を向けて、会話を続けてゆく』 ことで、様々な気付きが得られることも多く、
中には雑談の中で、いつの間にか癒えてゆく方も多い、とっても自然なヒプノセラピーです。

カウンセリングやセラピーは、『ちゃんと聴いてくれる人なのかな?』『こんな問題にどう応えるのかな?』 と不安に思われる方も多いものです。 そのため当セラピールームでは、
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