Kさん 30代 既婚

『 優しい、大きな、 おおきな手 』

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もう20年以上も前、ボディーワークを始めて半年ぐらいしか経っていなかった頃、
知り合いに “Kさん”という女性(30代)がいました。

これはそのKさんの話・・・

その頃、彼女は結婚して3~4年、まだ幼稚園前の小さな男の子がいて、
普通に育児ストレスもあるけど、

そんな事よりも最大の問題は「何考えてんだか分からない正体不明の旦那・・・
(本人談・・・)」の事でした。

「確かに居るし、給料は振り込まれてくるんだけど、本人は年に一回帰ってくるかどうか?

それも居ても数時間なのよ!

一体なにを考えてんだか? 私の事も、子供の事も、一体どうしたいんだか全然わからない。

聞いても何~にも喋んないし、ほんとに全~然訳の分らない旦那。
いや、会社には確かに居るのよ。」

私はその頃、毎日暇だったものだから良く電話で長話をしていたら、

ある日「ね~!稲本さんさ~。私んとこ来てボディーワークしてくんない?」って事になり、
「んじゃ、○日ね!」って、あっさり出張セラピーという事になりました。

当日、彼女の家に着いてしばらく雑談の後、
「ほんじゃ~お願いね~!」と言うことで始めました。

背中・腕・腰・・・と、彼女の体にコリ固まったストレスをほぐしてゆく内に、
育児の疲れも有るだろうけれど・・・

ストレス・・・  苛立ち・・・ やり場に無い不満・・・ そして御主人への怒り・・・

背中の痛みや、腰のコリ・・・

ふと「大丈夫・・・?」と聞くと、

「まあね~。 凄いでしょう?」

「うん。。。」

全身出来るだけほぐして、溶かせるものは溶かして・・・

顔のコリもほぐして・・・

最後は頭をゆっくりと緩めて脳の疲れを緩めて・・・

20分ほど静かに眠ってゆきました。(-_-)zzz

こうなると、皆さん大抵の方は寝てしまうものです、とても深く、静かに・・・

後で聞くと「寝ていた。 けれど意識はあった。」とか
「自分の寝息を聞いていた。」と語ったり、不思議な眠りを経験するようです。

終わって・・・

「何か食べようよ~! 何だかすっごくお腹減った~」

って事でデリバリーピザを食べながら、

友達の近況・・・ 子供の事・・・ 色々な事を話して、
ふと時計を見るともう深夜12時!

「もう行かなきゃ!」って、その時は何事も無く終わって、帰った・・・。

私の家までは夜風を浴びながらバイクで走って2時間。

「う~ん、これじゃただの出張マッサージと同じだな~♪」
・・・と思いながら家に着いたのが午前2時・・・

帰宅と同時に「プルルル・・・ プルルル・・・」
と電話が鳴って、出るとさっきのKさん!

「稲本さん・・・? ごめんね、こんな時間に・・・」

でも、声が普通じゃ無い、どうやら泣いてる。

鼻水すすってる! 声が震えている!!?

一瞬 「何か俺がマズイ事でもしたか?」と心配したけど、

どうやらそうじゃ無いらしい。

・・・以下は覚えている限りのその時の会話・・・

「ウッ ウッ グスッ グスッ」
(泣き声と鼻水の音?らしい)

「どうした? 何かあったの?」

「あのね・・・ あのね・・・ (グスッ) 今ね、・・・・ 」

「ん?」

「今ね・・・ 今、 何だか・・・ 子供にとっても優しくしてやれるの・・・」

「うん・・・そう? (??)  そりゃあ良かったね(???)」

「とってもね・・・ とっても素直に優しくしてやれるのよ~
(グスッ ウゥ・・・ ウゥ・・・) 」

「そうか~ もっと優しくしてあげたかったのか~~ 」

「そんでね、 そんで・・・ 何だかとっても可愛いのよ~。
(ウッ ウゥゥ~) 」

「ああ~ そりゃ~いいね~ 」
(どうやら良い事が起きてるらしい・・・ホッ^_^; )

「・・・でね   ・・・で・・・  おっきな手がね・・・」

「ん?・・・ 手・・・?」

「おっきな手がね・・・ ぜ~~んぶ聞いてくれてんの・・・」

「・・・・はあ?   手?」

「あたしの事・・・ ぜ~んぶ丸ごと・・・」

「ふ~ん、そうなんだ~ 」

(なに? 手・・・?
・・・とりあえず何か浄化が起きてるらしいけど・・・)

「今ね・・・」

「うん?」

「今・・・何だかとっても嬉しくって・・・」

「そうか・・・ 良かったね・・・」

(何だか良く分からないけど、良かったらしい。 )

「稲本さん・・・ 」

「ん?」

「ありがとね・・・」

「何だか良く解んないけど良かったじゃない。」

「うん・・・・ 今日はありがとう・・・」

「うん。 じゃあね・・・」

・・・と電話は終わった・・・

「何・・・? 手って なに?」という変な疑問を残して・・・・

・・・次の日・・・

昨夜の事が気になって電話で聞いてみた・・・

「昨日のあの大きな手って、何だったの?」

「あ~、あれね~。 あれはね、昨夜稲本さんが帰った後、ぼーっとしてたら、
今までの色んな事とか、忘れていた事とか、どんどん浮かんできてね~。

そうしてたら、ふと今まで何度も何度も見てた夢の事を思い出したのよ~」

「夢 ?」

「うん。 私がもっとずっと若い頃とか、もしかしたら、
もっとず~っと子供の頃から見てたのかも知れないんだけど、
いつも同じ夢を何度も見てたのよ~。」

「でね、 その夢がちょっと変なのよ。
誰だか解んないんだけど、大~っきな手をした誰かが居て、
その手にね、私がいろ~んなこと話してる夢なのよ~」

「自分一人じゃなくって?」

「うん。 そんでね、その人が誰なのかは良く解んないんだけど、
誰か大~~~っきな手だって事だけはハッキリ分かってんの。
でね・・・ その大~っきな手がね、
何でも、もう、なぁぁ~~んでも聞いてくれてるのよ。」

「私がね、『私、こんなことしちゃって・・・ あの時あんなこと言っちゃって・・・
あんな悪いこともやっちゃったの・・・ こんな酷い事もしちゃったの。。。』 って、
今まで誰にも言えなかった事や、後悔してることなんかも、
心の中で思っていたことを全~部、洗いざらい話しちゃってるのよ。」

「夢の中で?」

「うん。 でもね、その手はそんな私の話を

『うん、うん・・・ そうだね・・・ 分かってるよ・・・』って
全~んぶ、それこそぜ~~~~んぶ聞いてくれてるのよ。」

「ああ~ 何だかそれっていいね~。」

「でっしょう~?! そんでね、ず~っと前からこの夢を何度も見てたんだけど、
そのたんびに『あの手は誰の手なんだろう? お母さんかな~?
お父さんなのかな~?  彼シかな~?』 って思ってたのよ。」

「で、結婚してからは『この人なのかな~?』って何度も思ったりもしたの・・・
でも悪り~んだけど、ぜ~んぜん違うのよ~ (笑)

だから昨夜は 「稲本さんだったのかな~」 って思ったんだけど、違ったのよぉ~!」

「でね、昨夜あの後で私、気付いたって言うの? ふっ とわかったのよぉぉぉ~!」

「え? 誰だったの?」

「う~ん。。 やめようっかな~ 言っちゃおうかな~?

あのね~ あの手はねぇ~ ・・・

本当は  私自身  だったのよぉ~~(笑)」

「!! あぁ~!  そっっかぁ~ なるほどね~! 」

「うん! 昨夜それが分かって、もう何だかすんごく納得して、安心しちゃった~。」

「へぇ~~ そりゃ~良かったね~~ (^。^) 」

うん! 本当に良かったよ~(^o^)

・・・後日、 Kさんとは電話で色々な事を話して来たけど、

「私、こんな所で子守りしながら毎日、毎日悶々としてんのなんて、
もう嫌だよ~。堪えられないよ~~。」って話になって、

「でね、私、以前から、太陽の下、額に汗して肉体労働やってる男達って
『素敵だな~~!』って惚れ惚れしてたんだぁ~!」という話題になったことが有った。

そしたら数ヶ月して、何と突然、大型一種免許(10tダンプも運転出来るやつ)
を取りに行った!

その数ヵ月後には家を買ったり・・・
「気晴らしにもなるし・・・」とパートに行ったり・・・

マンションの部屋で子供と24時間、
毎日二人っきりで悶々としてた彼女が、自分から動き始めていった。

・・・あの日のボディーワークは何の助けになったのか?

彼女が自分の中に見つけた、かけがえの無いもの・・・

自分の中に “元々在ったもの” ・・・

この経験は私にとって、とても大切な事を教えられた出来事。

今回、このHPにあの時の事を載せて良いか聞くために、久しぶりに電話したら・・・

「うん!良いよ~。 今私ね~ 週に3~4日 2tトラックに乗って仕事してんだよ~

そんでね~ 今熱烈に恋してんのよ~! もうラブラブだよ~!!」

あぁ~、それは良かったね~!!!

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お母さんが教えてくれたこと
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「あ、そうそう! 実はね、この前ね、お母さんが亡くなったんだ。

癌だって分って、すぐ入院したんだけど、もう手遅れだったの。

それでね、私って兄弟の中でもお母さんと一番縁が薄いと思ってたんだけど、
行けるの私しかいなかったから、毎日ずっと看病したのよ。

痛がって、苦しんで、苦しんで、もの凄~く辛そうだった。

そんなお母さんを、私最後まで看取ったの。

それでね。 私、心底思ったんだぁ~、

『本当に思った通~りに生きよう!』って。

『人はそう生きなくちゃダメだ!』って心底思ったの。

生きたい様に生きて、泣いて、笑って、悩んで、恋して・・・

最終的には人間は何をやってもいいのよ。

でもね、自分がしたい様に!

生きたいよぅ~~に生きなかったら、

絶~対に駄目なんだって事・・・

あたしのお母さん、昔っから自分を抑えてばっかり、我慢してばっっかりで、

やりたいようにしたことなんか一度も無くって・・・

体だって、いっつも病気になるまで自分に無理させて・・・

もう、どうしようも無くなってから病院に行って・・・

昔っからず~っとそんな生き方してたの。

私はそんなお母さんの生き方をず~~っと見ながら育ったの。

だから「あんな生き方、やだな~」と思いながら、いつの間にか私もおんなじ事やってた。

じっと耐えて、ただじっと待ってて、じっと我慢していたのよ。

でも、そのお母さんがね、最後の最後まで苦しんで、苦しんで、

そうやって死んでゆく姿を、この私に全~部見せてくれて・・・

最後の瞬間も、私と二人っきりの時を選んでくれて・・・

すべてを見せてくれて、その姿を通して教えてくれていたんだと思う・・・

だからね、私・・・ 心底思ったんだ。

“思った通りに生きよう!” って・・・!』

『そうか・・・ 良いお母さんだな~~ (;_;)。』

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